明日は味方
明日は味方
タコの卵
見た目は少しびっくりするけど、食べてみると案外やさしい食感。
世の中には、食べてみないとわからないことが、まだまだあるんだなと思う。
有給を使えるものに
アキレス腱が「大丈夫」という診断は、「すこしくらい無理をしてもいい」という医者の許しだ。そこで早朝、田んぼの草刈りを敢行。まだ寝ぼけ眼の空気の中、草を刈る。刈る。躊躇なく、刈る。
青蛙の卵が、草むらに点在していた。生態系は大事だよな~と思いを馳せるが、思いは馳せても、手元の刃は止めない。オレにやられることくらい分かっているから、こんなに卵を産むのだ。昨日、体重計に乗った。痩せていなかった。全く。まるで昨日と同じように。言い訳のように「直前に1リットル水を飲んだ」と記しておきたい。草刈りの最中、必要以上に腰を使ってみた。すでに草刈りは目的ではなく手段だ。目的は腰回り脂肪燃焼運動だ。6月には川開きがある。
介護員ひとり、静かなる闘い


早朝7時半、平鹿病院に着いた。受付の札は「1番」。勝者のような気分で、8時の受付開始を待つ。
が、このとき、診察が5時間後になるという現実が待っていることを知らなかった。完全な敗者だ。
整形外科の待合室には、次々と人が集まる。
高齢者、松葉杖の青年。ギプスを巻いた子供たち。
そのなかで、ある一組が、空間の空気を変えた。
リクライニング式の車椅子に乗せられた認知症を患っているような老女と、それを押す介護員の女性。介護員はひとりだった。
老女は、叫ぶ。
「ああ、トイレさいぎでー!」
「ああ、トイレさいぎで!!」
「ああ、トイレさいぎで!!!」
──便意の訴えが三度で炸裂する。
介護員の女性は、やや身をかがめ耳元でささやくように言う。
「ちょっと待って」
だが、老女は止まらない。
「ああ、ウンチ出る!」
「ああ、ウンチ出る!」
「ああ、ウンチ出る!」
「ああ、ウンチ出る!」
「ああ、ウンチ出る!」
5回目には、場の空気が凍り付いている。周囲の人々が、目を伏せたまま耳を傾けている。聞こえないふりをしながら、誰もが集中している。
介護員が再び言う。
「大きい声出さないで、診察してもらいますから」
老女は、もっと大きな声で叫ぶ。
「ウンチ出る!!!」
「ウンチ出る!!!」
「ウンチ出る!!!」
そのあと、診察室側の壁をドンドン叩く。
そして、こう叫んだ。
「ここで、うんこしたらくさいよ〜へじねなー!」
誰もが心の中で――
「お願いだから、ここでうんこだけはしないでくれ」と思っていたはず。この神聖な待合室で、あの匂いが充満したらどうなるだろう?みんな病人なのに、せめて待っている間は平和で安静にしていたかった。認知症があるからといって、こんなデリカシーのない脅迫は無実で済むのか。
アキレス腱が。。。
土曜日、あいにくの天気。にもかかわらず、マスターズ決勝戦が予定どおり午後一時から行われるというので、急いで稲川球場へ向かう。
サードを守っていた自分ところに飛んできた打球。胸の下あたり、絶妙に判断が難しい高さ。グローブを出したその瞬間、「あれ?どうやるんだっけ?」と頭のどこかで誰かが呟いた。まるで、平仮名の「ぬ」が急に書けなくなった時のあの感じ。もちろん、はじく。弾いたボールを慌てて追い、無理な体勢で一塁へ投げたとき、足元で「違和感」を感じた。アキレス腱。名前は強そうなのに繊細。
そして次の打者、ホームラン。
エラーはその後も2つ追加。合計3回。悲劇というよりも、これはもはや事故だ。それぞれのエラーのあと、きっちり後続打者がランナーを返す。その度に、罪悪感がましていく。相手チームも必死だった。
もし阪神の下柳がこの試合の投手だったら、殺されてたと思う。
さて、自己弁護。前夜は商工会の総会で深酒。久々に入れたコンタクトレンズは、どうやら焦点ではなく幻影を見せてくれる仕様だったようで、ボールが二つに見えた。しかも最初のエラーのとき、すでに右足に異変を感じていた。いくつでも理由は思い浮かぶ。だが、草野球でさえも言い訳は見苦しい。認めなければ!試合を壊したのは、紛れもなく自分だ。
うちのピッチャーは100球以上投げていた。身体のどこかしらが痛くないはずがない。それでも彼は笑顔でみんなに声をかけながら投げ続けた。まさにエース!チームの鏡!
去年の大谷翔平を思い出す。肩を亜脱臼しながらも、ポストシーズンで優勝するまで最後まで出場し続けた。
……とはいえ。
明日、病院に行こうと思う。おそらくだけれど、アキレス腱が切れていると思う。



