明日は味方
明日は味方
カリフォルニアロールは突然に
風鈴と雁の郷デイサービスでは、それを「ちょっとした祭り」として小さなイベントに。初物のスイカを囲み、ご利用者と乾杯。
アボカドとサーモンが、秋田の地に異国の風を吹かせたかと思えば、すぐ横でミズを皮ごと剥いて、鯖の味噌汁の準備。
カリフォルニアと秋田のソウルフードによる、謎のマリアージュ。これぞ、求めていたものだ!笑
同じ東北とはいえ、山脈にさえぎられた物理的距離が、心理的な“遠さ”を生んでいる。でも、直線距離で見れば、たった40キロ。マラソンの距離だ。
いつものミズ剥き作業、畑、田んぼ、そしてカリフォルニアロール製造ラインを見ていただき、終盤には、ある職員に訊ねてみた。
「大谷が投げるからカリフォルニアロール作るって社長が言い出したとき、どう思った?」
職員の一人は「うーむ…」と目を伏せ、もう一人は「何も言えません!」と、やや空元気気味に返答。
これはもう、ポジティブな「何も言えない」ってことで脳内フォルダに保存しておく。都合よく、前向きに。
いいじゃないか、そういう思い出。
「大谷が復帰した日に、あいつに言われてカリフォルニアロール巻いて乾杯したなあ」なんて、後で語れるエピソードとしては上々だ。
活動記録動画を一緒に見て、1時間ほど話した。
地域が違っても、悩みはどこも似ている。答えは出なくても、「近くで同じようにもがいている人がいる」ことが分かってそれだけでも収穫だと思う。
たぶん、視察自体は何の参考にも、役にも立たなかったかもしれない。
それでも、お土産として手渡した、サランラップに巻かれた生ぬるいカリフォルニアロールだけは、きっと覚えていてもらえるんじゃあないだろうか。(味はともあれ)
大谷でつながるネットワーク。そんなのがあっても、いいじゃないか。
King is back!!
杉沢発、福島駅前行き
昨日、熊が出たことを知らなかった。知っていれば大人しくして、杉沢の山になど行かなかったのに。とりあえず無事に帰ってこられたからよかったものの、武器も持たずに出かけていたのだから、万が一熊と鉢合わせしていたら、病院送りになっていたかもしれない。
しかも今日に限って着ていたTシャツには、よりによって「ボコボコにしてやんよ!」のロゴが大書きされていた。これで熊にやられていたら、医師と看護師の笑い話として始まり、「13日の金曜日だった」というオチまで添えられて、魁新報の県南欄に載ってしまい、あっという間に全県に広まっていたかもしれない。
本当に熊にやられていたら…と思いながら、ふと頭の中で墓地を歩いてみる。目に入るいくつかの墓碑銘には「昭和十九年、ルソン島にて戦死」「マダガスカル島にて戦病死」などと刻まれている。いずれも、国という大きな物語に巻き込まれ、その果てで命を終えた人たちの記録だ。悲劇と崇高さが入り混じっている。そのすぐ横に、こんな墓がある。「令和七年、杉沢にて熊に、ミズと共に熊に喰わる」。──どうにも締まりが悪い。
さて、そのちょっとした危険の末に手にしたミズ。雁の郷で、みんなで皮をむいた。利用者から「手伝うから、少しでいいから食べさせて」とリクエストがあり、午後3時のお茶の時間に「ミズタタキ」としてふるまわれた。 終わってみれば、「役に立てて良かった」「ホント楽しい」といった声が聞こえてきた。仕事をしながらだと会話が弾む。仕事に没頭すると会話が要らなくなる。役割があるということは、やっぱり大事だなと感じた。そして最後には、利用者同士の即席漫才のような掛け合いに、何度も笑わせてもらった。何事も、続けることが大切だ。6月のうちに、また何度か杉沢に足を運びたいと思っている。
採ってきたミズは、福島駅前の炭焼き「成瀬」に出荷される。
腕の立つ料理長の手にかかれば、まるで舞台化粧をしたように色艶が引き立ち、皿の上では脇役を装いながらも、静かに主役を奪う。
シャキシャキとした夏の歯ごたえ。きっと、お客さんも「うまい!」とうなってくれるだろう。
──ただし、誰も知らない。
それが命がけで採られたミズだということを!その日着ていたTシャツに「ボコボコにしてやんよ!」と書かれていたことも。
6月にしては寒い日
それでもやはり願うのは、「ツインズを自分たちでよくしていくんだ」という気概を、委員としての関わりの中で少しでも育ててほしい、ということだ。会社としては、どの委員会に属しても、そこに何かの“学び”があり、何かを“変える”きっかけがあると信じているし、そうあってほしいと思っている。
バリ山行とエア登山部一行
去年の芥川賞受賞作『バリ山行』を読んだ。
「バリ?」と一瞬なる。南国のビーチが浮かぶのは、きっと自分だけじゃあない。バリ島一切関係なし。
正確には「バリエーション登山」の略らしい。聞き慣れない。が、なんとなく理解はできる。整備された登山道ではない、藪をかき分け、地図にないルートを見つけて進む。誰かが作ったレールに乗るのではなく、自ら道を開拓するフロンティア精神が現代日本人に求められているものかもしれない。
ちなみに自分の趣味は山菜採取登山だ。けれど、登る山は名もなき近所の低山。誰にも会わなくていいし、身近にあるのが魅力だ。近所の山に10年通い様々なルートを試してきた。それは、言ってしまえばバリエーション登山だ。だから、この小説に親近感を覚える。山岳小説が賞を受賞することは異例らしい。
小説家は何がすごいかというと、プロットはもちろんだけれど、風景情景の描写、登場人物の心情描写を文字で読者に伝える技術だと思う。 少し上から目線になってしまうかもしれないが、この「バリ山行」は最初から終わりまで気持ちがいい文章だった。山の情景、分け入る細部の描写もよく書けているなぁと思った。ただ、読後、ページを何度かめくり直した。「え? これで終わり?」という戸惑い。下巻があるのではと疑い、何度も検索してしまったが、ない。これで終わりだった。。。
そんなときの熊よけ必殺技の一つ。まるで複数人で登っているかのような“ひとり多役”小芝居術。
名付けて――「エア登山部!」。
「おお、あっちにいいミズありそうだな」
「っていうか、熊いたらどうする?」
「まあまあ、声出してりゃ大丈夫っしょ」
太くて、つややか。間違いなく一級品だ。









